師弟4人のキャラクター ~高橋恵子と周莉の対談(その2)
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高橋:「古典エナジー」。今回も前回に続き、中国の四大奇書に数えられる「西遊記」をテーマにします。
周:「西遊記」は日本でも数回もドラマ化或いは漫画化されるなどとても有名ですよね。ただ、日本のドラマ「西遊記」では、女優さんが三蔵法師役を演じていますよね。これ、大多数の中国人はなかなか理解できないんですよ。
高橋:う~ん、今風に言うと、イケメンだからなんじゃないでしょうか。
周:まあ、確かに三蔵法師は美貌の持ち主です。中国のドラマでも、イケメン俳優が演じていたんです。でも、どんなに美貌の持ち主でも、女性が演じると、ちょっと違和感がありますよ。
高橋:そうですよね。実は日本でも多くの人がこれについて疑問を持っているようです。「西遊記」における三蔵法師は、悟空ら3人に「守られる存在」だから、守られるにふさわしいか弱い雰囲気を出すことが、女優に期待されているということらしいですよ。
周:やっぱり三蔵法師の性格から来ているんですね。まあ、それはそれでいいんですが、実在の三蔵法師・玄奘が本当に女性だと誤解しないようにしてもらいたいですね。さあ、今日は、この三蔵法師を初め、「西遊記」に登場した主人公のキャラクターを徹底的に分析しましょう。
高橋:はい。簡単にまとめますと、臆病でお人よしの三蔵法師。怒りっぽくてプライドの高い孫悟空。大食いで女好きで欲望の塊である猪八戒。そして、性格があまりはっきりしない沙悟浄の師弟4人ですね。
周:はい、そうですね。では、1人ずつじっくりと分析していきましょう。まずは、三蔵法師。とてもやさしくて思いやりのあるお坊さんです。仏教の戒めなどをきちんと守ります。
高橋:人殺し、いや、どんな命のあるものは、どんなものでも殺したくない人ですよね。この点で、よく悟空ともめたりします。悟空は妖怪でも人間でも、三蔵法師を脅かそうとするあらゆる者の命を奪ってもいいという考えですよね。
周:これについては、三蔵法師は実は思いやりのあるただのお人よしではないと思います。場合によっては、悟空が起こしたトラブルによって、自分も巻き込まれそうな面倒くさいことが嫌いなのかもしれません。我々が思っているほど善良で凛々しいお坊様ではなく、時々ただ普通の人間です。私たちと同じように。
高橋:三蔵法師はあまりにも思いやりというか、情が深いですね。いいことでもあるんですが、そういうところを様々な妖怪に利用されてしまいましたね。
周:ええ、妖怪たちが一番よく使う手口は、弱々しい人に成りすますことです。例えば、紅孩児とか、白骨夫人などです。子供や若い女の子、お年寄りなどに化けていました。そうすると、三蔵法師はかわいそうに思い、助けようとするのです。結局、騙され、妖怪が仕掛けた罠に引っかかってしまいます。
高橋:悟空は妖怪の変化でも何でも見抜く目を持っていますから、それは人間ではなく、妖怪が扮装しているだけだと、いつも説得しようとしています。でも、三蔵法師は聞かないんですよね。そんな時の三蔵法師はとても頑固です。しかも、騙されやすいです。
周:三蔵法師には、もう一つの悪い癖があります。それは、悟空ではなく、いつも猪八戒の話を信じるんですね。前回の番組でもお話ししたことがありますが、猪八戒はよく悟空にからかわれるので、悟空のことをとても嫉妬しています。一度チャンスがあれば、悟空に取って代わろうとしています。しかし、私がどうしても理解できないのは、三蔵法師はどうして貪欲で好色の猪八戒の話を信じようとするのか、猪八戒の中傷を聞いて、悟空にキンコジュを唱え、追い出したこともあります。
高橋:人の言葉を軽々しく信じるというのは、三蔵法師のマイナスなところですけど、女性との交わりにおいては、極めて品行方正な人ですね。そして、どんな困難にぶつかっても、めげずにがんばっていく姿がすばらしいなあって思います。
周:そうですね。続いては、孫悟空のキャラクターを分析しましょう。悟空はいたずらっ子の典型です。勇敢で、恐れを知らないことのほか、短気、せっかち、虚栄心の持ち主である一面があります。今回は、前回に続き、主に悟空のちょっと意外な厚かましくて腹黒い一面を深く掘り下げていきたいと思います。
高橋:前回の「真偽孫悟空」の話を通じて、孫悟空と同じようなレベルの技を持つ妖怪、六耳ビコウが実は孫悟空の悪意の化身であり、本当は悟空が自作自演のシーンだったという、「西遊記」の新しい捉え方を紹介しました。
周:ええ、今日も実例を挙げて、悟空のそんな厚かましくて、腹黒いところをご紹介します。「孫悟空、龍宮で大暴れ」という話しを皆さんご存知だと思います。孫悟空は自分の手に相応しい武器を探しに東海の龍宮を訪ねました。龍王はとてもフレンドリーに隣人である孫悟空を持て成し、東海の鎮海神針である如意棒を捧げました。すばらしい武器を手にした悟空はその場で舞い上がり、棒を振り、東海に住むすべての生物を驚かせました。それでも、まだ満足できず、調子に乗って、鎧も求めました。結構図図しいですね。
高橋:すばらしい仙術を習得した悟空は、ちょうど怖いもの知らずで、大暴れしていた時期でしたね。でも、結構正直でまっすぐな感じですね。まあ、図図しいとか、厚かましいといったところはまだ理解できますが、腹黒いというのは、ちょっとピンと来ないですね。
周:前回の番組でご紹介した真偽孫悟空、もし本当に偽悟空が孫悟空の仕業だとすれば、なかなかのもんじゃありませんか?もう一つの例をご紹介しましょう。白骨夫人の話では、悟空は白骨夫人が化けた3人を殺しました。そうしたら、三蔵法師は怒り、悟空を追い出しました。悟空はどうしても三蔵法師を拝もうとしたのです。
高橋:美猴王時代=修行前の性格だったら、そんな無能な三蔵法師に追い出されるのなら、あっさり去ってしまうと思いますが、どうしても三蔵法師を拝もうしたのは、何かのたくらみがあったからですか?
周:それしか考えられませんね。三蔵法師に誤解された悟空は、その時、自分でもまだキレていたはずなのに、師父を拝んでから去っていたのは、やはり、将来のことをよく考えていた結果だと思います。必ず戻ってくる、必ずこの上司と共に、再びお経を取りに行く旅に戻ってくると、信じているからです。
高橋:だから、自分から三蔵法師との仲を徹底的に壊してはいけないと、十分策略を練っていたわけですか。なるほどですね。孫悟空と言うと、いつも勇ましくてせっかちな印象なので、とても聡明なところをついつい忘れてしまいますね。
周:���うですよね。もう一つ面白い例があります。悟空、二郎真君とともに九頭虫を退治する話ですが、悟空と猪八戒が九頭虫と苦戦していたところに、二郎真君と他の仙人が通りかかりました。悟空は猪八戒に助けを求めに行かせました。
高橋:えっ、何故自分が行かないの?昔交戦したことがあるので、知り合いですよね?
周:そうですね。こんな遠慮ぶりは、無鉄砲な孫悟空らしくないように見えます。でも、500年間も山の下敷きにされていた孫悟空は、いろいろ考えたと思います。まず、自分の限界を見直したと思います。多くの事柄について、自分ひとりではなく、他人の助けを借りた方がいいと言うことを。それから、「出る杭は打たれる」。何でも自分ばかりでしゃばるのではなくて、他人に助けてもらうのもいいということです。
高橋:より控え目に行動するようになった孫悟空。実力が下がったように見えますが、実は仏になることにますます近くなっているんですよね。
周:さて、次は、いよいよ猪八戒のキャラクター分析を行いたいと思います。猪八戒は三蔵法師の弟子の中で、一番欲望に忠実です。食欲旺盛なだけでなく、もちろん女性も大好きです。
高橋:こんな欠点がありますから、度々妖精の罠に引っかかってしまい、みんなにの足を引っ張っていました。でも、そこがなんとも人間くさくて憎めない魅力として、多くの読者の心を引き付けたようですね。
周:ええ。中国のあるウェブサイトは2,3年前、女性のネットユーザーを対象に、「西遊記」の師弟4人で、最も好きなのは誰?というアンケート調査を行いました。
なんと、猪八戒と答えた女性が一番多かったんです。その理由としては、「享楽主義の典型だ。仕事はまあまあだが、享楽が好き。普通の生活の楽しさが分かりそう」とか、「今時流行っているそこそこの経済力・学歴・容姿という男性のイメージに合っている。そこそこの女性にとって都合のいい男性でありそう」など、といったことを上げられています。
高橋:へえ、猪八戒だ!ちょっとびっくりしました。私はどっちかというと孫悟空かな。
周:「西遊記」において、一番自分の欲望を隠さずにそのまま出したのは、猪八戒ですから、そのキャラクターはとても鮮明なものです。まずは好色ですね。
高橋:もともと天の川を管理し水軍を指揮する将軍でしたが、まあ、とても立派なお仕事でしたね。女癖が悪く、酔った勢いで月に住む嫦娥をセクハラしたので、天界を追われて地上に落とされてしまったのです。
周:師弟4人の中で、唯一結婚したことがあるのも、猪八戒です。しかも、お経を取りに行く途中でも、きれいな女性や女性の妖精を見ると、解散しようとか、婿に入りたいとかよく言います。
高橋:猪八戒のもう一つの特徴と言えば、怠け者と言うことですね。肩に担ぐものの重さとか、険しい道などよくブツブツ文句を言います。そして、道を探しに行くはずなのに、寝てしまうこともよくありましたね。
周:そうですね。しかも、いざと言う時になると、荷物を分けて解散しようとか、自分がやめるなどと言い出したり、仲間を売ったりします。お経を取りにいくことに対して、最も優柔不断です。
高橋:そして、大食いです。20人分の量を食べるとか。。。よく嘘をつく。兄貴分の悟空の悪口を言う。。とてもリアルな人間像です。でも決して嫌いになれません。
周:最後に、沙悟浄です。沙悟浄の性格は師弟4人の中で一番はっきりとしていません。いつも白馬の傍を黙々と歩く男っていうイメージです。
高橋:確かに、登場した時だけ目立っていたようですね。なんかとても恐ろしい妖怪のイメージでしたけど、後は、影が薄いような感じでした。
周:そうですね。登場シーンだけ、なかなかインパクトがありますね。ところで、日本では、沙悟浄が河童だと思われているらしいですが、本当ですか?
高橋:たぶん最初の登場が河だったので、河に住む妖怪だとすると、日本のイメージでは河童だと思い込んだのかもしれません。
周:中国には河童という言い伝えがありませんし、原文をよんでも、河童であると明言していないと思います。天界の役人だった者が追放されたので、姿も元のままでしょう。
高橋:なるほど。師弟4人の中で、能力も姿も生活も一番目立たない存在なのかもしれませんが、縁の下の力持ちとして、サポーターとして一行をフォローしているという役目もすごく大きいのではないかと思います。
周:その通りですね。師弟4人はそれぞれ長所があり、短所もあります。お経を取りに行く旅では長所を取り入れ、短所を補うことができたので、途中で挫折することがなく、旅が続けられているのでしょうね。
高橋:「古典エナジー」、中国の古典「西遊記」の主人公たちのキャラクターを徹底的に分析しました。