中国の叙事詩『孔雀東南飛』②

皆さんこんにちは、「songyun.org中国語教室」というコーナーを始めました。このコーナーでは中国に関する知識や中国語の勉強方法などをご紹介いたしますので、このウェーブサイトを有効にご利用していただき、この中国語教室が皆様のお役にたちますように心より願っています。

私も日々日本語と英語を勉強していきたいと思っておりますので、今後とも、よろしくお願いいたします。

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中国の漢の末期、200年ごろ、現在の安徽省にあたる廬江郡の役所に焦仲卿という下級役人がいました。妻の劉蘭芝とは、とても夫婦仲がいいのですが、焦の母親はこの嫁を気に入らず、実家に追い返してしまいました。実家に戻っても嫁の劉蘭芝は再婚はしないと決意しました。しかし、家族に再婚を強要され、結局、川に飛び込み自殺してしまいました。夫の焦はそれを聞いて、庭の木に首を吊り、後を追いました。当時の人はこの悲しい話を聞き、詩として書き残しました。詩のタイトルは「孔雀東南飛(孔雀が南東に向かって飛んでいく)です。

 「古典エナジー」、今回は、前回に続き、中国古代叙事詩の名作「孔雀東南飛」をお届けします。前回は聡明で勤勉なお嫁さん劉蘭芝は、姑とは上手くいかず、いざこざが絶えませんでした。夫、焦仲卿は間に入るのですがうまく行きません。逆に自分の母親から新しい女性を紹介してあげるから、その嫁とさっさと別れなさいと、強く求められます。劉蘭芝は余儀なく夫や小姑と別れ、実家に戻りました。夫婦二人は愛を絶対裏切らないと誓い、別れました。前回の番組では、ここまでご紹介しました。今回はその続きをお届けします。

 実家に戻った劉蘭芝は、夫の家から追い出された訳ですから、とても恥ずかしい思いです。劉蘭芝の母親は娘が帰ってきたのを見て、驚きました。両手を叩き、こんな風に言いました。

 劉母:あなたが勝手に実家に帰ってくるなんて、これっぽちも思わなかったわ!あなたが13歳の時から、機を織ることや裁縫、楽器、礼儀などたくさんの習い事をさせてきた。17歳であなたを嫁に出しました。心の中でこんな完璧な娘だから、大きな過ちを犯すことはないと自信を持っていた。あなたはいったいどんな過ちを犯したの?実家から迎えに行かないのに自分で帰ってくるなんて!

 劉蘭芝は母親の話を聞いて、とても恥ずかしくなり、こう話しました。

 劉蘭芝:こんな言い方は、よくないかもしれませんけど、どう考えても私には何の過ちもないと思っています。

 劉蘭芝の母親は娘の話を聞いて、とても悲しい顔をしました。十数日後、地元の県の知事は媒酌人を通して、縁談を持ち込んできました。知事の三男は、とてもかっこいい19歳ぐらいの男です。口が達者で、才能もあるということです。娘のこれからの人生をとても心配する劉蘭芝の母親は娘を説得しようとしました。

 劉母:いい話じゃないか!母さんは受けてもいいと思うのよ。

 劉蘭芝は泣き出しそうになるのを必死に抑えながら、話しました。

 劉蘭芝:私は夫と別れる時、あの人に何度も言われました。また、一緒になろう。永遠に分かれる訳ではないと二人で誓い合いました。今日、その誓いを裏切るようなことを言われても、できません。とりあえずその媒酌人の話を断ってください。再婚のことはまた後で話しましょう。

 娘の話を聞いて、劉の母親は媒酌人に言いました。

 劉母:貧しい我が家の娘。嫁いだばかりで、離縁させられました。前の婿はごく普通の役人です。そんな家にも嫌われたのですから、県知事のご令息という高い屋敷には、とても適わないと思います。ですから、こちらは、この縁談にお答えできません。どうぞ他のお嬢様をたずねてください。

 県知事からの媒酌人を断った数日後、現在の大きな市に当たる郡の長官も、五番目の息子のために、縁談を持ち込んできました。しかし、今回は媒酌人ではなく、長官の秘書を努める役人が仲人として訪ねてきたのです。この役人は劉蘭芝の母親に言いました。

 役人:私の長官の五番目の息子さんは、容姿や態度もすばらしく、気品がある高貴な男性です。ぜひお宅と婚姻を結びたいと思って、お邪魔させていただいております。

 自分の娘の気持ちをよく理解している母親は、再び縁談を断りました。

 劉母:娘は、再婚はしないと別れた夫と固く誓いました。ですか ら、私はどうしても再婚の話を伝えることができません。

 しかし、蘭芝の兄は郡の長官からの縁談を断ったという話を聞き、とてもイライラしていました。そして妹にこんな風に話しました。

 蘭芝の兄:お前よく考えろ!前の夫は普通の下級役人だが、今度は高貴な男性と結婚できるんだぞ。運の良し悪しがはっきり分かるだろう!この幸運な縁談で地位や財産、すべて手に入れられる。このような高貴な男性を逃したら、この後いったいどうするつもりなんだ!

 蘭芝は頭を揚げて答えしました。

 蘭芝:これは本当にお兄さんらしい話ですね。私は嫁いだのに、中途半端になって再びお兄さんの家、実家に戻ってきました。ですから、この縁談のことをどうこう、口を出せる立場じゃありません。お兄さんの言うとおりに従います。私は夫と誓いましたが、もう永遠に会うチャンスがないと思います。この縁談に直ぐに返事をしてください。すぐに結婚しますから。

 仲人を務めた長官の秘書は、蘭芝の話を聞いて、大喜びでした。席から立って、「はい。はい。分かりました。そうしましょう。」といい、役所に戻りました。そして、次のように長官に報告しました。

 長官秘書:縁談を取り次ぐように言われ、劉さんのお宅を訪ねてきました。そして、ただいま戻ってまいりました。おかげさまで、大成功でした。息子さんとそのお宅のお嬢さんとは、ご縁があると思います。

 長官はその話を聞いて、とても上機嫌になりました。すぐに暦を調べて、結婚によい日を決めました。その日は何と、三日後の三十日です。すると、長官の邸宅では結婚式のため皆忙しく準備を始めました。きれいな船や素敵な装飾品を飾った馬車などで、さまざまな品物を調達してきました。そして、蘭芝の家には高額の結納金を贈りました。蘭芝の母親は娘に話しました。

 劉母:先ほど長官からのメッセージが来ました。明日、おまえを迎えに来るんだよ。なぜまだ衣装を作らないの?おまえのせいで結婚式ができないなんて、承知しないよ。

 蘭芝は黙って、ハンカチで口を押さえて、ただ涙を流していました。椅子を持って、窓に向かい、衣装を作り始めました。午前中は刺繍を入れたスカートを作り上げ、午後には上着の服を縫いました。まもなく空が暗くなります。蘭芝は色々な思いで胸がいっぱいになり、ドアを出て号泣しました。

 焦仲卿はこの思わぬ出来事を聞き、慌てて休みをとって役所から帰ってきました。蘭芝の実家の近くまで来ると、無性に悲しくなり、乗った馬も悲しげに鳴いていました。聞きなれた夫の馬の鳴き声に蘭芝は、家の外まで迎えに走っていきました。馬のくらを触りながら、焦を見つめ、やがて大きなため息をつきました。

 蘭芝:あなたと離れた後、本当に色々思いも寄らない出来事が起きました。やっぱり私たちが想像したような甘いもんじゃありませんでした。あなたにはわからないかもしれません。私には実の母親がいて、そして、私を強く攻める兄がいて、無理矢理、私の結婚を決めてしまいました。いまさらあなたが帰ってきてくれても役立たないと思います。

 焦仲卿は自分の無力さを感じ、妻にも怒りを覚えました。そして、強く言いました。

 焦仲卿:いい家の息子と再婚できて、おめでとう!俺という硬い石は千年立っても変わらない。けど、お前という葦は柔らかいけど、短い時間しか持たない。お前はこれからどんどん地位があがり豊かになる。俺は一人で死んだらいいよ!

 蘭芝は夫の話を聞いて、一層悲しくなりました。

 蘭芝:こんな話をするなんて思いもしませんでした。あなたも私も同じ、人に強いられています。では、あの世で会いましょう。今日の誓いを裏切らないでください。

 二人はぎゅっと手を握り合いました。そして、別れを告げ、それぞれ実家に戻っていきました。生きているのに、死の覚悟をしていました。その怒りはどれほど大きいことでしょう。焦仲卿は家に戻って親に会い、このように話しました。

 焦仲卿:今日は、風が強くてとても寒いよ。強い風で木が折れて、庭の白木蓮には霜が凍りついています。俺は今まもなく沈む太陽日のようで、お母さんのこれからを、さびしくさせてしまいました。わざとこのように話したのではありません。もう、鬼とかこの世にいないものを恨むことをやめてください。末永くお元気で。長生きできるように祈ります。

 息子の遺言のような話を聞くと、焦の母親は泣きながら息子を説得しようとしていました。

 焦母:あなたは良家の息子で、役所で官職にも付いている。ただ女のために死のうなど思ってはいけません。もともとあなたと彼女は地位が違う。離縁しても薄情とは言えない。隣の家には美しくて上品な子がいる。あなたのために縁談を進めるわ。すぐに返事してくれると思うから。

 焦は母親にお辞儀をして自分の部屋に入りました。最愛の妻が住んでいた部屋にいると、ますます悲しくて苦しくなり、長いため息をつき、死の決心を固めました。

 結婚式の当日、結婚式が行われた後、夜、静かになりました。蘭芝は「私の命は今日で終わる」と思い、池に飛び込みました。

 焦は妻が飛び込んで自殺したことを聞き、庭の木の下でしばらくさまよった後、木の枝に首を吊り自殺しました。

 二人は亡くなった後、家族の要望により、山の麓にある同じ墓に埋葬されました。お墓の周りには青桐や松、柏などの木が植えられ、枝や葉が絡むように茂っていました。そして、木々に2羽のおしどりが棲みつき、よく囀りあいました。

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