過熱する幼児教育
皆さんこんにちは、「songyun.org中国語教室」というコーナーを始めました。このコーナーでは中国に関する知識や中国語の勉強方法などをご紹介いたしますので、このウェーブサイトを有効にご利用していただき、この中国語教室が皆様のお役にたちますように心より願っています。
私も日々日本語と英語を勉強していきたいと思っておりますので、今後とも、よろしくお願いいたします。
家族総動員体制で臨む育児、過熱する早期教育競争、子供に対する過度の期待と苛立ち――家に子供がいることは本来楽しいことだ。しかし、若い両親のなかには、子供に対する心配の余り、緊張状態に陥ってしまう人もいる。
若いママの唐さんは近頃、食欲もなく夜もなかなか眠れない。夜中に子供の泣き声を聞いた気がして跳び起きると、子供は横ですやすや眠っている。2歳の子供の発熱に気づけなかったことをきっかけに、そんなことが多くなった。あの夜、お祖母ちゃんが見つけて病院に連れて行ってくれなかったらどうなっていたか――唐さんは自分を責め、子供がまた熱でも出したらと思うと心配でたまらない。子供が咳を一つでもすれば、すぐに大敵がやってきたような気分になるのだ。
上海浦東区に住む韓さんは、去年の妊娠から出産を経た今までに、数百元にのぼる出産育児関連の書籍を購入した。何か問題があったらすぐ本を調べ、インターネットで資料を探す。今年5月に女の子が生まれてから、心配の種はさらに多くなった。赤ちゃんの顔の上にできた赤い斑点は何だろう? 汗ばっかりかいているのはどこか悪いんじゃないか? 「子供の足をまっすぐに育てるには足を縛るといい」とお隣さんは言っていたけど、本当だろうか?――わからないことだらけで、韓さんはあちこちに電話をかけて答えを探さなければ気がすまない。「夜中に電話をしてしまうのは迷惑だろうと思っています。でもわからないことがあるとどうしても気を揉んでしまうので仕方がない」
夫婦だけで面倒を見るのが大変なら、お祖父ちゃんお祖母ちゃんに孫の世話を手伝ってもらうという方法もある。もともと上海の出身でなかった韓さん夫婦は、夫の両親を子育てのために上海に呼び寄せた。韓さんの家では月3000元で家政婦さんも雇っているから、総勢5人で子供の世話をしていることになる。しかしそれも贅沢のうちには入らない。祖父母4人と両親、家政婦の総勢7人で子供1人の面倒を見る「七星捧月」体制を取っている家庭も少なくないからだ(七星捧月:7つの明るい星が月を囲んで揃う天体現象。中国では昨年1月に観測された)。なかには家事専門と子育て専門の2人の家政婦を雇う家庭もある。
子供の教育がスタートラインで出遅れないために、若い両親たちは必死だ。けれども、教育のスタートラインは今や子供が生まれる前にまで早まりつつある。
李さんは妊娠が確認されてすぐに仕事を辞め、それからは本を参考に家で胎教の毎日だ。「一生に一人しか生めない子供。大事に育てたいと思うのは当たり前」と李さんは言う。夫も負けずに熱心で、どこからか放射線測定器を探してきて、家中の電気機器の放射線量を測り、「コンピューターは使用禁止、台所も入ってはダメ」と胎児の安全な生育に気を使う。「放射線は胎児に悪影響を与える」からだ。
子供が生まれてからの教育はさらに重要となる。浦東区に住む楊さんは8ヶ月になる娘のために幼児教育のクラスを申し込んだ。週末1時間のクラスに1時間かけて通っている。タクシー代だけで30元の学費をはるかに超えてしまうが「子供の将来に与えるメリットを考えれば高くない」と言う。ちかごろ早期教育クラスの保護者会に出席して、楊さんの幼児教育の重要性に対する信念はさらに強まった。
英語の幼児教育も親たちの関心の的だ。五角場(上海の商業エリア)にある「早期教育中心」の学費は、1コマ45分で200元と値を張るが、子供を連れた親たちの出入りが絶えない。
また、子供を将来通わせたい学校の学区に家を買うのも、ホワイトカラーの人々なかでひそかな流行になりつつある。韓さんの友人は子供ができてすぐ、浦東区梅園地区にある古アパートの一室を購入した。この学区の幼稚園と小学校の教育の質が高いからだ。韓さんもこの手の情報には注意を払っているが、不動産業者の話によれば、名門校学区内の住宅は需要が多く、運がよくなければ買えない状態だ。
晨悟工作室の江さんはコンサルタントとして、過度の焦慮状態にある若い両親と何度も接してきた。江さんによれば、若い両親は育児の知識に欠けるが、自分の前の世代のやり方に倣うのも抵抗がある。そこで本やウェブ上の知識に頼るようになるのだが、世の中にはさまざまな育児方法に関する知識が乱れ飛んでいて、親たちは何に従っていいのかわからない。そうやって育児を原因とした焦燥状態が生まれるという。
また、一人っ子政策が長期にわたってつづいているため、両親の子供に対する期待度が高過ぎるということも焦慮状態の一因となっている。「近所の子が家の子の知らない漢字を知っていた」「家の子の背が本に書いてある標準よりも2ミリ低い」というような些細なことで夕飯まで喉を通らなくなる。親たちはしつけの問題に対しても常に憂慮を抱えている。子供がちょっと活発だと「多動症か?」と心配し、反対に静かだと「自閉症か?」と疑う。
専門家によれば、両親の焦慮や不安は、子供に容易に伝染する。両親の消極的な心情に長期にわたってさらされた子供には、憂鬱・怒りっぽい・友達と一緒に行動できないなどの問題が現れることが多い。過度の焦慮は、両親と子供の両方の心理・行動のバランスを崩すことになる。親として重要なのは、子供の自主的な能力を適切に養い、参考書の標準に惑わされることなく、子供を世話する自らの能力を信じることである。育児の実践によって経験を重ねていくうちに、焦慮状態もやがては解消されていくはずだからだ。