金はいつも光り輝くもので、中国の「毛遂の自薦」という成語は、次の故事のことをいう。
古代の戦国時代、趙の国の都邯鄲は強大な秦の軍隊に包囲され、危険にさらされていた。そこで
邯鄲を救うため、趙の王は楚の国と連合して秦に立ち向かう策を立て、楚を説得するため、親王である平原君を遣ることにした。
こちら平原君は早速自分の食客の中から知勇兼備の士20人を選び、同行させようとしたが、19人は選べたものの、あと一人足りない。と、このとき、食客の一人毛遂が、同行を申し出た。
「私に何の用事だ?」
「私は毛遂というもの。ご主人が邯鄲を救うため楚に遊説に行かれると聞きましたので、ご同行しようと思いました」
「その方はここに来てどのくらいになる?」
「三年ですな」
「三年といえば短くはない。いいかね、優れた人材というものは錐みたいなもので、袋の中に入れておいても、それを突き破って先が勝手に飛び出してくるのだ。しかし、その方はここの三年もいるのに、優れた才能があるとは聞いておらん。私が楚に行くのは国を救う重荷を背負っているのじゃ。才能なきものが行っても始まらん。ここに残っておれ」
平原君は正直に言い聞かせたつもりだが、当の毛遂は自信ありげに答えた。
「そうではないでしょう。私に才能がないのではなく、ご主人が私を袋の中へ入れなかったのでしょう。もし袋の中に入っていれば、私はとっくに袋を突き破っております」
コメント