中国伝統医学(東洋医学)と大自然の関係

皆さんこんにちは、「songyun.org中国語教室」というコーナーを始めました。このコーナーでは中国に関する知識や中国語の勉強方法などをご紹介いたしますので、このウェーブサイトを有効にご利用していただき、この中国語教室が皆様のお役にたちますように心より願っています。

私も日々日本語と英語を勉強していきたいと思っておりますので、今後とも、よろしくお願いいたします。

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中国では、古代から病因を様々な方法で分類してきました。とくによく使われていた病因の分類に、体外の原因である「外感」と体内の原因である「内傷」の2つに分類する方法があります。外感には六淫・疫痢・外傷・虫獣傷・寄生虫などが含まれ、内傷には精神素因の七情、生活素因である飲食と労逸、内生素因である痰飲と淤血、体質素因の偏虚・偏寒偏湿・偏燥偏熱などが含まれます。

漢方では病気の発生を、正気が邪気に負けたことによるとみています。ゆえに、正気を充実させ、邪気に負けないようにすることを非常に重視しているのです。正気とは、人体の機能活動(臓腑・経絡・気血水など)、自然治癒力などの生命力すべてを指し、略称を\"正\"といいます。邪気とは、生命力を阻害して、病気を引き起こす原因であり、\"邪\"と略されます。

外感 六気と六淫

六気
大自然の気象の状態をあらわすのに、風、寒、暑、湿、燥、火という6つの気象現象をとらえ、これらをまとめて「六気(ろっき)」といいます。
季節 期 間 季節の特徴 気象
春 2月~4月 温かくなり始める季節で、春温ともいわれる 風
夏 5月~7月 最も熱い季節で、夏熱ともいわれる 暑・火
長夏 7月 夏の中でも湿度が高い季節 湿
秋 8月~10月 涼しさと乾燥が始まる季節で、秋涼といわれる 燥
冬 11月~1月 最も寒い季節で、冬寒といわれる 寒

六淫
外感の中でも、特に重要なのは「六淫(りくいん)」です。
漢方では、外界の環境因子が人体に与える影響を非常に重視しています。一般に季節が変わると、気候もそれに応じて変化します。気候の変化が正常な場合には、「六気」と称される6種類の気候変化となってあらわれ、人体活動を促します。しかし、気候の変化が異常な場合や、人体が六気に対して著しく抵抗力を無くしたときには、六気はそれぞれ、風邪・寒邪・暑邪・湿邪・燥邪・火邪(熱邪)という、邪気となって人体に障害を与えます。これら6つの外邪をまとめて「六淫」といいます。
六淫の特性
一般に人体が六淫を感受した初期の段階では、表証という特有の症状があらわれます。それぞれの症状は、六淫の性質によって違いがあり、治療もそれぞれ異なります。したがって、外邪の特性を知り、臨床症状と六淫とを関連づける判断力を身につけることが要求されます。

風邪 風邪に犯されると人体の皮毛やそう理(皮膚や肌、筋肉、臓腑などにある細かい隙間)が開いて外邪が体内に侵入し、悪風や発汗などの症状が出やすくなります。風邪が人体を襲うと人体の上部や外側にある頭部や肌表を犯し、頭痛・鼻・咽・目などの病変を起こすとされています。
風邪を感受すると、発病が急速で進行が速く、患部は固定せずに移動し、症状が出たり消えたりする、という特徴が見られます。また、体がふるえたり痙攣したり、あるいはふらつきを感じるめまいなどの症状が現れます。
寒邪 寒邪を受けると、人間は局部あるいは全身の冷えを感じます。これは体温が体内の陽気によって支えられており、寒邪がその陽気を障害するからなのです。人体の陽気には、衛気・腎陽・心陽・脾陽・肝陽などがあります。寒邪は肌表や呼吸器官あるいは直接脾胃に侵入してくることが多いので、陽気の中でも特に衛気や脾陽を障害しやすいことが分かります。
脾陽は脾気を温め脾の運化作用を促進していますが、寒邪に襲われてその作用が弱まると、嘔吐・泄瀉・腹部の冷痛などの症状があらわれます。
経絡や筋脈の寒邪による障害は、凝滞と収引の性質が同時に出現することが多く、四肢がひきつって痛み、温めると症状が軽減するのが特徴です。
暑邪 人体が暑邪に襲われると、高熱・顔面紅潮・大量発汗・口渇・脈数洪大(振幅が大きく速い脈象)などの激しい熱症状があらわれます。
暑邪は人体の皮毛やそう理を開き、津液を消耗させて、身熱・大量発汗・口渇して飲食を欲する・尿赤短少(量の少ない赤い小便が出る)などの症状を示します。また、津液の蒸発が激しいと、気も津液につられて漏れ出してしまうため、気短(呼吸が短促してとぎれとぎれになる)や乏力(気力が萎える)などの症状があらわれるほか、激しい場合は脱水症状を伴って突然混迷し、昏睡に陥って意識不明となることもあります。
湿邪 湿が肌表に侵入すると身体や四肢が重くだるくなり、関節に停留すると重く痛んで動作が障害され、分泌物や排泄物も濁って汚いものになってしまいます。
湿濁は、清い津液とは違って粘着性が強いと考えられており、湿邪に犯されると分泌物や排泄物がべとついたり、大小便の切れが悪くなかなか拭き取れない、などの症状があらわれます。
湿は重濁で粘滞性の性質を持つので、臓腑経絡中に渋滞すると、気機を阻滞して気機の昇降を失調させたり、経絡の運行を阻害します。昇降の失調には、胃部のつかえ感・嘔吐・大小便がすっきり出ないなどの症状があらわれます。また、湿は水に似ていて陰邪であるため、人体の陽気を損傷するとされていますが、陽気の中でも特に脾陽を損傷します。脾は、水液を運化する作用を主り、燥を喜び、湿を悪む性質を持つため湿邪が停留すると脾陽が障害されて、下痢・尿量減少・水腫・腹水などの症状があらわれます。
燥邪 燥邪は乾燥性の強い外邪であり、人体を襲うと陰液を消耗して、潤いを消失させます。肺はみずみずしく潤った状態を好むデリケートな臓器であるため、燥邪に襲われやすく、肺の陰液が消耗すると、宣発・粛降作用は失調し、から咳・痰は少ないかあるいは血が混じる・喘息して胸痛するなどの症状があらわれます。
燥邪が体表や呼吸器を襲うと、口鼻や皮膚は乾燥して口渇したり、激しい場合は髪の毛や皮膚がかさついて亀裂が生じてしまします。また燥邪が、皮毛や呼吸を主る肺と表裏関係にある大腸に影響すると、大便は乾燥して出にくくなります。
火邪 火熱が人体を犯すと高熱・悪熱・口渇・発汗・脈洪数などの症状のほか、人体上部にある頭や顔面に熱が昇って、口舌生瘡(口腔内や舌にできものができる)・歯茎が腫れて痛む・目が赤く腫れて痛む・頭痛などの症状をあらわします。
火熱には血を動かして出血を促進する性質があります。例えば、これは病症というほどのものではありませんが、入浴や興奮によってのぼせ過ぎると鼻血が出るのは、熱が血を動かす現象の一つです。実際の疾病では、火邪が血分に及んだり脈絡を損傷したりすると、吐血・喀血・鼻出血・血尿・血便・皮下出血・崩漏(不正性器出血)など各種の出血があらわれます。
また、火熱が体内に侵入すると、上焦に位置し陰陽調節の中心となる心に達して神明を障害し、心煩(胸中が熱くほてって落ち着かない)・不眠・狂躁妄動(精神が狂い乱れて、手足をばたつかせる)・神昏譫語(意識が昏迷しうわごとをいう)などの症状を示します。

内傷 精神素因・生活素因・内性素因

精神素因・七情
七情とは喜・怒・思・憂・悲・恐・驚の7種類の感情の変化を示したものです。七情の刺激は直接内蔵に影響して疾病を引き起こす原因となるので、「内傷七情」とも称されます。ただし、これら7種類の感情の変化は外界の事柄に対応する精神の反応であって、正常な状況においては、発病の素因となることはあまりありません。病因としての七情になるのは、急激で強烈な精神的衝撃や長期間に及ぶ持続的な精神刺激によって起きる感情の変化です。

七情と五臓の関係
7種類の異なる感情は、それぞれ臓器の精気によって維持されており、五臓に異常が発生すると感情にも変化が起こります。
感情と五臓、気の関係
喜 心臓 気が緩む
怒 肝臓 気が上がる
憂 脾臓 気は結ぶ
悲 肺臓 気が消える
恐 腎臓 気が下り乱れる

生活素因・飲食と労逸
生活習慣を健康的に維持する基本的な条件として、質のよい適量の食事・適度な運動・休養をバランスよくとることが必要となります。故に、節度ある生活習慣は疾病の予防となり、節度のない生活は疾病発生の原因となります。生活習慣の中で疾病の原因となるものに、飲食不節と労逸があります。飲食不節の中では、食べ過ぎと偏食による疾病があらわれやすくなっています。食べ過ぎは脾胃を痛め食積を形成し、肥甘厚味の過食や飲酒の過度は湿熱を発生させます。また、辛味の過食は胃熱を発生して陰液を消耗し、反対に生冷の過食は、脾陽を障害して寒湿を内生させます。

労逸には、過労・心労・房事過多・安逸の過度が含まれます。労逸の「労」とは、精神的・肉体的過労を意味し、この中には肉体的過労・精神的過労・性行為の過剰が含まれます。「逸」とは、安楽すなわち休息を好んで身体を動かさない運動不足という意味です。
過労は、気を消耗し全身の機能を低下させ、心労は、心神を消耗したり脾の運化を障害し、房事過多は、腎精を消耗し、運動不足は、気血運行を障害したり脾の運化を失調させます。

内性素因・痰飲と淤血
人体は飲食物や自然界の清気などを原料に、気・血・水(津液)を生成代謝しています。この気・血・水(津液)の代謝において、飲食が不適当であったり、臓器・経絡の代謝・循環過程に異常が起きると、体内に異常代謝物質が発生してしまいます。これらの気血水の異常をそれぞれ「気滞」、「淤血」、「痰飲」と呼んでいます。気滞・淤血・痰飲は気・血・水(津液)に比べて運行されにくく、正常な生理活動を妨げて、新たな代謝障害を発生させます。

痰飲
痰飲とは、水液代謝の障害によって形成され人体の局部に滞留した、異常体液を指しています。また、痰飲は痰と飲とに区別され、粘稠で混濁な物を「痰」と呼び、希薄な物を「飲」と呼んでいます。
痰飲は、種々の病因によって発生しますが、主に、肺・脾・腎・三焦などと関係しています。これらの水液代謝に関与する臓腑経絡が障害されると、痰飲が発生します。肺や胸部に滞留すると、咳嗽・喘息などがあらわれ、胃や腸間に滞留すると、胸悶・悪心・嘔吐・胸腹部の脹満などがあらわれます。心に影響すると精神障害や眩暈があらわれ、肌や経絡に滞留すると浮腫や疼痛・麻痺などの症状があらわれます。

淤血
淤血とは、血液の運行が緩慢になって臓腑や経絡内に停滞し、および経脈から離れて滞留した血液(いわゆる内出血に相当するもの)の総称です。
淤血は、寒邪・熱邪・過労・七情・外傷などの病因が、血液循環に関与する心・肺・肝・脾・血脈などの臓器機能を障害することによって形成されます。
淤血が形成されると、正常な血液の持つ滋養作用が減退するほか、血液の運行が影響されて疼痛や出血あるいは腫塊などが出現します。しかし、これらの症状は淤血以外の気滞や痰飲が原因となることもあるため、淤血が原因となってあらわれる症状の特性は次のようになっています。
疼痛 漢方の疼痛に対する考え方は、“不通則痛”「通ずればすなわち痛まず、通ぜざれば則ち痛む」といわれており、経絡系統の滞りが疼痛を発生させると考えます。経絡系統を渋滞させるものが、気・血・水の異常代謝物である気滞・淤血・痰飲ですが、渋滞する物質によってそれぞれ痛み方が違います。

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